子供が食物アレルギーを起こしたら?すぐできる応急処置と症状の経過目安
子供の食物アレルギーは、早めの対応がとても大切です。
この記事では、よくある症状とその現れ方、家庭でできる応急処置、すぐに役立つ形でまとめています。
- 食物アレルギーはなぜ起こる?
- 食物アレルギーの種類
- 食物アレルギーの原因となる食べ物一覧
- 食物アレルギーの症状(アナフィラキシー)
- 子供に食物アレルギーの症状が出た際の対処法
- 食物アレルギー検査
- よくあるご質問
食物アレルギーはなぜ起こる?
食物アレルギーは、子供から成人まで見られる一般的なアレルギー反応です。これは、特定の食品を摂取した際に免疫系が過剰に反応し、体に有害な影響を及ぼすことを指します。乳糖不耐症のように牛乳を飲んで下痢をする状態や食中毒は、食物アレルギーには含まれません。
食物アレルギーの原因となるのは、食品中のたんぱく質です。食べ物が消化され、その成分が腸から吸収されるとき、体は特定のたんぱく質を外来物質とみなし、血液中のIgE抗体(免疫グロブリンE)がこれに反応してアレルギー反応を引き起こします。
例えば、卵白アレルギーの方は卵白のたんぱく質に反応するIgE抗体(卵白特異的IgE抗体)を持っており、牛乳アレルギーの方は牛乳のたんぱく質に反応します。卵白アレルギーの方が牛乳を摂取しても反応しないのは、その方が牛乳特異的IgE抗体を持っておらず、牛乳のたんぱく質に免疫系が働かないためです。
食物アレルギーの種類
食物アレルギーは様々な形で現れ、それぞれに特有の症状があります。
即時型食物アレルギー
このタイプのアレルギーは、食事の後15分~2時間の間に発症することが多く、じんましん、咳、呼吸困難などの症状が見られます。複数の臓器に影響を及ぼす場合、これをアナフィラキシーと呼びます。血圧が低下し、意識障害が起こるような重篤な状態はアナフィラキシーショックと称され、生命の危険が伴うため、迅速な治療が求められます。
食物蛋白誘発胃腸症(新生児・乳児消化管アレルギー)
生後間もない赤ちゃんが粉ミルクを飲むと、下痢や血便、嘔吐などの症状が出ることがあります。その場合、医師はアレルギー専用のミルクを処方することもあります。
1歳になると半数以上の子供が、2歳になると約90%の子供が症状から回復するとされています。
食物依存性運動誘発アナフィラキシー
主に10代~20代の男性に多く見られるこのアレルギーは、特定の食品を摂取した後に運動をすることで発症します。
症状は急速に進行し、アナフィラキシーショックに至ることもあるため、エピペン®の使用や救急車の呼び出しなど、迅速な対応が必要です。治療後は、原因となった食品を特定することが重要です。
口腔アレルギー症候群
口腔アレルギー症候群(oral allergy syndrome ; OAS)はとは、果物や野菜を食べたときに、口の中や喉にかゆみや違和感などの症状が現れるアレルギー反応のことです。症状は口や喉に限られ、全身には広がらないのが特徴です。
花粉-食物アレルギー症候群
花粉-食物アレルギー症候群(pollen-food allergy syndrome ; PFAS)は、特定の花粉にアレルギーのある人が、似た構造をもつ果物や野菜を食べたときに、アレルギー症状が出る病気です。
代表的な食べ物にはリンゴ、モモ、メロンなどがあり、これらを食べたあとに口の中や喉がかゆくなるなどの「口腔アレルギー症候群(OAS)」の症状がよく見られます。
多くの場合は軽い症状で済みますが、1~2%の人では、全身症状(アナフィラキシー)に進展することもあります。
また、花粉の飛散状況によって患者数は地域差があることが知られています。
ラテックス-フルーツ症候群
ラテックス-フルーツ症候群(latex-fruits syndrome;LFS)とは、ラテックス(天然ゴム)にアレルギーのある方が、バナナやアボカド、クリ、キウイなどの果物を食べた際に、即時型のアレルギー症状を引き起こす病気です。
ラテックスアレルギーを持つ人のうち、約30〜50%がこれらの果物でもアレルギー症状を起こすとされています。
食物アレルギーの原因となる食べ物一覧
食物アレルギーの原因となる主な食品には、卵、牛乳、小麦が挙げられます。これらに落花生、ソバ、カニ、エビを加えた7つの食品は、アレルギー反応を引き起こす頻度が高く、重症化するリスクも高いため、食品表示法により表示義務があります。
さらに、アワビ、イカ、イクラ、サバ、サケ、牛肉、豚肉、鶏肉、ゼラチン、大豆、クルミ、ゴマ、カシューナッツ、アーモンド、マツタケ、ヤマイモ、バナナ、リンゴ、モモ、キウイフルーツ、オレンジなどもアレルゲンとして知られ、表示が推奨されています。年齢に応じてアレルギーを引き起こす食品は異なり、多くの食品がアレルゲンとなる可能性があります。
画像参照:「食物アレルギー診療ガイドライン」
https://www.jspaci.jp/allergy_2016/chap03.html
食物アレルギーの症状(アナフィラキシー)
食物アレルギー(即時型)は、皮膚のかゆみや蕁麻疹、湿疹などの皮膚症状が一般的ですが、腹痛や呼吸困難といった全身性の症状も特徴的です。これらは日常生活で頻繁に発生し、食物アレルギーの兆候として見逃されがちです。症状は皮膚、粘膜、呼吸器、消化器、神経、循環器の各系統に分類され、それぞれが特有の反応を示します。
皮膚・粘膜の症状
- かゆみ
- 蕁麻疹
- 赤み(紅斑)
- 浮腫み(唇やまぶた)
- 湿疹
消化器の症状
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口、のどのかゆみや違和感
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腹痛
-
吐き気
-
嘔吐
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下痢
呼吸器症状
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咳(犬吠様(ふりがなでけんばいよう)咳嗽含む)
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くしゃみや鼻水、鼻詰まり
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喘鳴(ぜんめい)
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呼吸困難
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声枯れ
循環器症状
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頻脈(脈が速くなる不整脈)
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血圧低下
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顔面蒼白
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心停止
神経症状
- 咳
- 喘鳴(ぜんめい)
- 呼吸困難
全身の症状
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元気がない、ぐったり
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眠気
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頭痛
-
不穏
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失禁
- 意識消失
子供に食物アレルギーの症状が出た際の対処法
子供に食物アレルギーの症状が出た場合、以下のように対処することをおすすめいたします。
呼びかけに対して反応がなく、呼吸をしていない場合
心肺蘇生を始めつつ、救急要請をしてください。
緊急性の高い症状が1つでも当てはまる場合
以下のような症状が見られる場合は、ただちに救急車で医療機関へ搬送してもらう必要があります。
緊急性の高いアレルギー症状
全身の症状
- ぐったり
- 意識もうろう
- 尿や便をもらす
- 脈がふれにくい
- 唇や爪が青白い
呼吸器の症状
- のどや胸がしめつけられる
- 声がかすれる
- 犬が吠えるような咳
- 息がしにくい
- 持続する強い咳き込み
- ぜーぜーする呼吸
消化器の症状
- 持続するお腹の痛み
-
嘔吐を繰り返す
上記症状が1つでも当てはまれば、下記対応をお願いします。
①ただちにエピペン®を使用する
➁救急要請を行う
➂※その場で安静を保つ(注)
④その場で救急隊を待つ
⑤可能なら内服薬を飲ませる
エピペン®とは?
エピペン®は、重いアレルギー反応(アナフィラキシー)に対する応急処置用の自己注射薬です。「アドレナリン」という薬剤が含まれており、呼吸困難や血圧の急激な低下といった命にかかわる症状を一時的に改善します。
使い方は簡単で、太ももに衣服の上からでも注射が可能です。事前に医師の指導を受けておけば、いざという時に落ち着いて対応できます。
当院はエピペン®の処方が可能な医療機関です。
食物アレルギーやアナフィラキシーのリスクが心配な方は、お気軽にご相談ください。
※(注)安静を保つ体位について
ぐったり、意識朦朧としている場合:血圧が低下している可能性があるので、仰向けで足を30cmほど高くしてください。
吐き気、嘔吐がある場合:吐物による窒息を防ぐため、顔と体を横に向けてください。
呼吸が苦しくて仰向けになれない場合:呼吸を楽にするため、上半身を少し起こしてよりかかるような姿勢をとってください。
速やかな医療機関受診が望ましい場合
下記症状が1つでも当てはまる場合は医療機関を受診してください。
呼吸器の症状
- 数回の軽い咳
消化器の症状
- 中等度のお腹の痛み
- 1~2回の嘔吐
- 1~2回の下痢
目・口・鼻・顔の症状
- 顔全体の腫れ
- まぶたの腫れ
皮膚の症状
- 強いかゆみ
- 全身に広がる蕁麻疹
- 全身が真っ赤
医療機関に到着するまで5分ごとに症状の変化がないか観察し、緊急性の高い症状がみられたらエピペン®を使用するようにしてください。
自宅で安静にして注意深く観察が必要な場合
下記症状が1つでも当てはまればご自宅で安静にして、症状の悪化がないか注意深く観察するようにしてください。
消化器の症状
- 軽い(我慢できる)お腹の痛み
-
吐き気
目・口・鼻・顔の症状
- 目のかゆみ、充血
- 口の中の違和感、唇の腫れ
- くしゃみ、鼻水、鼻づまり
皮膚の症状
- 軽度のかゆみ
-
数個の蕁麻疹
- 部分的な赤身
少なくても1時間は5分毎に症状を観察して、改善がなければ医療機関を受診してください。
食物アレルギー検査
食物アレルギーの症状が現れた際には、詳細な問診が最初のステップです。食べた食材の記録は、診察時に有用です。
その後、血液検査で特定のアレルギー物質に反応する特異的IgE抗体の有無を調べたり、皮膚にアレルゲンを塗布し反応を観察する皮膚プリックテスト(現在当院では実施しておりません。)を行ったりします。これらのテストが陽性であっても、必ずしもアレルギー反応が起こるわけではないため、あくまでアレルゲン特定の手がかりとなります。
問診やこれらのテストでアレルゲンが明らかにならない場合は、食物経口負荷試験を実施して原因物質を特定します。この試験では、疑わしい食物を摂取し、アレルギー反応が起きるかどうかを観察します。
よくあるご質問
昔はなかったのに、大人になってから食物アレルギーを発症するのはどうして?
食物アレルギーは一般的に子供時代に発症すると考えられがちですが、大人になってから発症するケースも増えています。子供の場合は卵、牛乳、小麦が主な原因ですが、大人では小麦だけでなく果物、野菜、魚類も原因となることが多いです。これらを食べると、免疫系が誤ってアレルギー反応を引き起こします。
特に、花粉症と食物アレルギーの関連が指摘されており、花粉症の方は果物や野菜に含まれる成分と花粉が似ているため、食べ物によってもアレルギー反応が起こることがあります。これを交差反応と呼びます。
大人の食物アレルギーの症状には、皮膚のかゆみや発疹、じんましんがありますが、口唇や口内、喉の腫れやかゆみ(口腔内アレルギー症候群)、消化器症状などが特に多く見られます。食べ物を摂取後に運動することで症状が現れる食物依存性運動誘発アナフィラキシーにも要注意です。
診断には、詳細な問診、皮疹の観察、血液検査、皮膚検査、経口負荷試験 が用いられますが、原因となる食物が特定できないこともあります。食物アレルギーが確定した場合、原因食物を避けることが治療の基本ですが、加熱によってアレルゲンが無害化される食品もあるため、完全に避ける必要がない場合もあります。食物依存性運動誘発アナフィラキシーの方に対しては、運動の2~4時間前の原因食物を摂取しないようお願いしています 。
食物アレルギーの症状は治まるまでにどれくらい時間がかかりますか?
食物アレルギーによって発疹が現れたとしても、数十分~翌日中に消失します。 ただし、約10%の患者さんで重症化することもあります。また一旦症状が落ち着いたあと、数時間後に再燃することもあるため注意が必要です。 症状が出現した場合はその重症度の見極めと急激に増悪する可能性を念頭に置きながら経過観察することが大切です。 症状が出現してから少なくとも症状が十分に終息したと思われるまでは経過観察を怠らず、症状消失後も一般的には2時間程度(症状が強ければさらに長い間)の経過観察が必要です。 重症度の見極めなどは特に難しいため、医療機関への受診をおすすめします。
食物アレルギーは食後何時間で症状が出ますか?
食物アレルギーは摂取した食物に対する体の反応であり、反応のタイプによって症状が現れるタイミングが異なります。 即時型は食物摂取から30分以内(遅くても2時間以内)に症状が出現します。2時間以上過ぎている場合は食物蛋白誘発性胃腸症などの即時型以外のタイプを疑います。
食物アレルギーの蕁麻疹はどこに出ますか?
口の周りの赤みや小さな発疹から始まり、瞼の腫れや全身に広がる発疹に至ることもあります。 症状が進行すると、咳や喘息様の呼吸困難、嘔吐、そして最終的にはショック状態に陥ることもあり、これらは緊急医療を要する状況です。
また、原因となる食品の特定は重要ですが、検査結果だけが全てではありません。皮疹 が発生するたびに摂取した食品を記録し、共通する食品を推定 することが有効です。 軽症の場合、まずはかかりつけ医への相談をおすすめします。 重症であったり、原因が複数あると考えられたりする場合は、専門医による詳細な診断と治療を受けましょう。