子供の肌がザラザラ・赤い・かゆい…これって皮膚炎?早めに気づいて対処するために
子供の肌のザラザラ・ブツブツ・肌荒れが気になる
子供の肌は成長途中で敏感であり、未熟な免疫システムを持っているため、治療には特別な注意が必要です。子供には独特の皮膚の問題が存在し、個々の差も大きいため、個別に適した治療を提供することが重要です。
また、小さな子供はしばしば自分の症状を言葉で表現できず、症状が悪化してから気づかれることが多いです。そのため、親御さんや周囲の大人の方は子供の肌の変化に注意を払い、何か異常を感じたら速やかに医療機関に相談しましょう。
赤ちゃん・子供の肌荒れが起こる原因(年齢別の特徴)

新生児期:生後0日~4週間
子供の内分泌機能はまだ発達途中ですが、母親から受け継いだ物質の影響で、一時的に皮脂が多く分泌されることがあります。
乳児期:生後4週間~1歳
生後2〜3ヶ月を過ぎると、皮脂の分泌量が減少し始めます。
幼児期:1歳~6歳
この時期は皮脂の分泌が最も少なく、皮膚の乾燥に注意が必要です。
学童期:6歳~12歳
思春期の始まりと共に皮脂の分泌が活発になります。
子供の皮膚は角層が薄く、皮脂の分泌が不安定であるため、バリア機能が完全には発達していません。これにより、湿疹や皮膚炎が生じやすく、細菌やウイルスの感染リスクも高まります。そのため、適切なスキンケアで皮膚バリアを強化することが、子供の皮膚健康を守る上で重要です。
よくある子供の皮膚炎の種類と原因
乳児湿疹
乳児湿疹と書いておきながら厳密にいうと「乳児湿疹」という疾患名はなく、乳児の肌トラブルの総称です。乳児期早期の新生児ざ瘡(新生児にきび)や脂漏性皮膚炎に始まり、あるものは改善しあるものはアトピー性皮膚炎へと様相を変化させていきます。
中毒疹
新生児の約30~70%にみられる皮疹です。多くは生後1~3日の間に顔や体幹、手足などに出現し5日程度で自然軽快します。皮疹の内容物は無菌性です。原因としては出生後から始まる皮膚常在菌の定着に対する免疫応答と考えられています。
新生児ざ瘡
新生児の約20%にみられ、出生時にはなく生後2~3週目から出現してきます。一般的なにきびと同じで、皮脂分泌の亢進が原因の1つとされます。顔と体幹が好発部位で、スキンケアのみで多くは改善します。
乳児脂漏性皮膚炎
生後5~6週ごろから出現してくる皮疹で、顔面や頭皮の紅斑と黄色の脂漏性痂皮(かさぶた)、鱗屑(皮がむけてカサカサした状態)を特徴とし、数カ月で自然軽快します。アトピー性皮膚炎とは異なり、さほどかゆみを伴わないことも特徴です。しかし、一部の乳児は脂漏性皮膚炎とアトピー性皮膚炎が重複することがあるため注意深い観察が必要です。
子供の皮膚は角層が薄く、皮脂分泌が不安定であるため、バリア機能が完全には発達していません。そのため、入浴時には肌を強くこすらず、優しく洗って皮脂の付着を減らすことが大切です。適切なスキンケアと症状に応じた塗り薬の使用が治療に役立ちます。
おむつかぶれ
おむつかぶれは、尿や便に含まれるアンモニアなどの刺激に、清拭時の機械的刺激が加わることで生じます。近年の紙おむつの普及により、素材が原因の刺激性接触皮膚炎は激減し、大半が「清拭部位に一致した」紅斑丘疹です。保護者や介護者による過度な清拭をやめてもらうことが重要です。びらんが顕著で疼痛などがある場合は亜鉛華難航を厚めに塗布します。
アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎は慢性的な皮膚病で、年齢に応じて症状が変わります。乳児期は顔や胸に湿疹が現れ、幼児期から学童期には、乾燥と関節部のかゆみが特徴です。思春期には皮膚が硬くなることもあります。遺伝や環境が原因で、バリア機能の低下によりアレルギー反応が起きやすくなります。
当院としてはアトピーで悩むお子さんの一助になれればと思っております。かゆみで日常生活に支障をきたしているお子さんが少しでも楽になれるよう、その方に合った方法を提案させていただきます。適切な保湿、スキンケア、外用剤の使用でたいていのお子さんはしっとりつるつるの肌になっていきますが、当院で対応しきれない場合もございます。その際は連携医療機関に紹介させていただきますのでご安心ください。
あせも(汗疹)
あせも(汗疹)は、汗による刺激で皮膚に水ぶくれやブツブツが現れる症状で、気温の高い夏場に多く、また発熱時に大量の汗をかいたときも発症しやすくなります。
通常は無症状で自然に治りますが、かゆみがある場合はステロイド外用剤や抗ヒスタミン剤を使用し、適切なスキンケア(汗をかいた後はシャワーなどで洗い流す)で早期に対処することが重要です。
とびひ
とびひ(伝染性膿痂疹)は、皮膚の小さな傷口(搔き傷や虫刺され)に黄色ブドウ球菌やA群β溶血性連鎖球菌が感染して、紅斑、水疱、膿疱、びらん、痂皮(かさぶた)などが生じてくる皮膚感染症です。特にアトピー性皮膚炎の患者や乾燥肌の人は感染しやすいため注意が必要です。
水ぼうそう(水痘)
水ぼうそう(水痘)は、水痘-帯状疱疹ウイルスの初感染によって引き起こされる感染症で、空気感染・接触感染により迅速に広がります。気道分泌物(痰など)あるいは水疱内容が気道粘膜や眼粘膜から侵入し感染します。約14日の潜伏期間を経て全身に水ぶくれが現れ、発熱を伴うこともあります。頭皮や顔にみられることも特徴です。合併症としては皮疹部における細菌の二次感染が多くみられます。成人では髄膜炎や急性小脳失調、肺炎、肝炎などもみられます。
乾燥肌
赤ちゃんや子供の皮膚は非常に繊細で、適切な毎日の保湿ケアが大切です。乳幼児期の皮膚は皮脂分泌が少なく、角質層が薄いため、乾燥しやすく肌トラブルが起きやすいです。
当院では、お子様の年齢や皮膚の状態に応じた保湿剤を提供し、スキンケアの正しい方法を丁寧にお教えします。
子供の皮膚炎は病院に行くべき?受診の目安
子供が痛みやかゆみで不快感を示し、発疹が急速に広がると、親御さんも心配になるのは当然です。夜間に発疹に気づいた場合、救急外来への受診が必要かどうか迷うこともあるでしょう。しかし、多くの発疹は翌朝まで様子を見ても問題ありません。その間に以下の対応をすると良いでしょう。
- 発疹の状況を注意深く観察し写真を撮っておく。
- 感染の可能性がある場合は、マスクを着用し、手洗い・うがいを徹底する。
- かゆみがある場合は、発疹の部位を冷やして、掻かないようにする。
- 診察のために、発疹が出た時の状況を記録しておく。
じんましんの場合は、直前の行動から原因を推測できることがあります。食事と運動が組み合わさって起こる運動誘発性じんましんもあるため、食事内容は記録しておくと良いでしょう。さらに、受診時(もしくは電話予約時)には、受付で発疹の存在を伝えてください。
このような症状がある場合は、急いで病院へ
発疹だけでなく以下の症状も見られる場合は、アナフィラキシーという重症な状態の可能性があります。これは生命を脅かす緊急事態なので、直ちに救急外来への受診が必要ですし、状況によっては救急車を呼ぶべきです。
- 息苦しそうにゼーゼーしている
- ぐったりとして反応が薄い
- 全身が赤くなっている
- 腹痛があり、嘔吐を繰り返している
子供の肌荒れ・皮膚炎の治療法とスキンケア

塗り薬
外用薬には、保湿剤と炎症を抑制する薬があります。保湿剤は皮膚の乾燥を防ぎ、バリア機能を支えるために重要で、お風呂上りや洗顔後など、肌が清潔な状態でこまめに塗布することが推奨されます。炎症を抑えるためには、ステロイド外用薬が一般的に用いられますが、炎症の種類によってはヤヌスキナーゼ(JAK)阻害外用薬やホスホジエステラーゼ4(PDE4)阻害外用薬を選択することもあります。使用量や適用範囲については、詳しく指導しますので安心してご利用ください。
皮脂のケア
皮膚の清潔を保つことは重要ですが、過度に擦りすぎるとバリア機能が損なわれ、乾燥やかゆみが悪化する可能性があります。石鹸は泡立てて優しく洗い、お風呂の温度は38~40℃に保ち、長時間の入浴は避けましょう。乾燥する季節には、時には石鹸を使わずにお湯だけで洗うことも検討してください。子供向けの低刺激性の石鹸やシャンプー、洗顔料を選び、適切なスキンケアを心がけましょう。
皮膚の問題が長引くと、喘息やアトピー性皮膚炎、食物アレルギーなどのアレルギー疾患に発展するリスクがあるため、早期の対応が推奨されます。